吉水 千鶴子氏(筑波大学人文社会系)による『チベット仏教の世界 ~仏教伝来からダライ・ラマへ~』(ヒマラヤ学誌 No.17, 146-153, 2016)を、ヒマラヤ学誌編集委員会(編集責任者;松林公蔵京都大学教授, 奥宮清人京都大学准教授)の承諾を得て、掲載しています。

チベット仏教の世界
―仏教伝来からダライ・ラマへ―

吉水千鶴子(筑波大学人文社会系)

チベット民族には政治から人々の日常生活にいたるまで、すみずみまで仏教が浸透している。その歴史的背景を探ると7 世紀の仏教伝来に遡るが、国家仏教として取り入れられた事情は日本と相通じるものがある。その後も仏教は国の政治と密接に関わり、チベット民族の重要な外交手段となっていった。元朝、明朝、清朝という強力な中華王朝に対し、彼らは仏教を広めることによって内陸アジア一帯にチベット仏教文化圏を形成し、自らの生き残りを図った。その過程で生まれたのが転生活仏ダライ・ラマを頂点とする政教一致の政治体制である。

一方、仏教はチベット文化の核であり、チベット民族ばかりなくモンゴル、ネパール、ブータンの多くの人びとの精神的支えである。僧院ではさまざまな学問が行われ、インドから伝えられた仏教の教義が研究され、チベット独自の発展をとげた。現在も続くチベット仏教の主要な宗派は12 世紀から15 世紀の間に誕生している。

今のチベット系民族は、中華人民共和国内の西蔵自治区、四川省、青海省、雲南省、甘粛省などの地域と、ネパール、ブータン、インドのラダック地方に居住するほか(地図1)、チベットから亡命した人々とその子孫が世界各地に分散している。ダライ・ラマの亡命政府はインドのダラムサラにある。ばらばらになった彼らを繋いでいるのも仏教である。チベット民族のアイデンティティとも言える彼らの仏教の世界を、その始まりから17 世紀のダライ・ラマ政権成立に至る礎の時代を通して紹介する。

(以下、添付ファイルをご参照くださいませ。)

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