横山 智氏による『生業としての伝統的焼畑の価値 ―ラオス北部山地における空間利用の連続性―』(ヒマラヤ学誌 No.14, 242-254, 2013)を、ヒマラヤ学誌編集委員会(編集責任者;松林公蔵京都大学教授)の承諾を得て、掲載しています。
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生業としての伝統的焼畑の価値 横山 智 自然の力を利用して作物栽培を持続的かつ循環的に営むことができるのが焼畑農業である。先人たちは、土地に合った耕作と休閑のパターンを守り、焼畑を何世紀にもわたって存続させてきた。しかし、遅れた農法と見なされた焼畑は、世界各地で規制され、その面積は急速に縮小し、消滅の危機を向かえようとしている。本研究では、現在でも広く焼畑が営まれている東南アジアのラオス北部を事例に、焼畑を持続させてきた自然資源の循環的利用や焼畑を営む人びとの生業維持の戦略にフォーカスをあてることで、焼畑の生業にとっての価値を再考することを試みた。その結果、焼畑の特徴は「区分」ではなく「連続性」に特徴づけられることを示した。火入れ後の1 年間は食料を生産する「畑」であるが、その後の休閑地となっている長期間は植物の侵略と遷移が繰り返され、また各種の生物が生きる「森」である。焼畑は畑と森の両方の機能をあわせ持ち、森林を破壊する農法と捉えるのは適切ではない。さらに、生業の面から焼畑を捉えると、作物栽培を行った後、同じ場所で牛の刈跡放牧を行い、植物や昆虫を採取し、狩猟まで行っている。生態学的な連続性に加えて、生業の連続性という特徴も有する。焼畑を「連続性」の視点から再考すれば、従来とは異なる価値を見いだすことができるのである。(以下、添付ファイルをご参照くださいませ。) |