1. 「アフリカの 5千メートル峰に登る」
    ~ 氷河を抱く山々~
    (1)キリマンジャロ山(5895m)、ケニア山(5199m)
        安仁屋政武(筑波大学名誉教授、AACK)

     1995年9月、アフリカの最高峰キリマンジャロ(5895m)に登る機会があった。5泊6日でマチャメ・ルートからバランコ小屋・バラフ小屋を経由して登るコースである。このルートは一般的なマラング・ルートと異なり、人が少なく氷河地形を含む景色はバラエティに富んだ素晴らしいコースであった 。

     2000 年11月、ケニア山(5199m)にナロモル・コースから行き、山を周回して氷河・氷河湖の写真撮影を行った。実際に登ったのは歩いて登れるレナナ峰(4985m)である。 U字谷、カール(圏谷)、モレイン、 氷河湖(Tarnターン)など氷河地形の発達がいい。写真撮影した全ての氷河は地図(少なくとも1988年以前の情報)に示された氷河の範囲よりもかなり後退していた。

    (2)ルウェンゾリ山(5109m、Mt.Rwenzori)
        栗本 俊和(AACK)

     ウガンダとコンゴの国境に位置し、ビクトリア湖からの多量の水蒸気のため雨が多く、滅多にその姿を見ることができないため「幻の月の山」と称され、ナイル河源流の山とされる。アプローチに深いジャングルの湿地帯を通過し、氷河上の登攀と山頂付近の岩稜登りと相俟って冒険的要素とクライミングの両方を楽しめる山、ルウェンゾリ。2012年2月に女性2名を含む3人で登りに出かけた時の様子を写真で紹介した。女性2人はともにチョモランマを登頂している。

  2. 「野生チンパンジーの世界」
    ~マハレ山塊国立公園(タンザニア)の事例より~
    伊藤 詞子(京都大学野生動物研究センタ―研究員)

     東アフリカ西端に位置するマハレ山塊国立公園では、主に野生チンパンジーの研究が継続しておこなわれてきており、来年で50周年を迎える。チンパンジーの日常の暮らしぶりとともに、長期研究によって徐々に明らかになってきた、チンパンジーと彼らを取り巻く世界の短期的(e.g. 主食となる果実の利用の仕方と結実動態パターンの関係)、及び長期的な動態(e.g. 気候や植生の変化)について、紹介された。

  3. 「アフリカの自然と近年の環境変化」
    ~ケニア山、キリマンジャロ、ナミブ砂漠~
    水野 一晴(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)

     アフリカにはキリマンジャロ、ケニア山、ルゥエンゾリ山のみ氷河を有するが、近年の温暖化により氷河が縮小し、10年後にはアフリカの高山から氷河が消滅すると言われている。ケニア山では氷河の後退ともに各植物種の分布が斜面上方に拡大し、さらに気温上昇が直接分布拡大につながっていると考えられる植物種も現れてきた。近年は降水量の多い年と少ない年がはっきりと分かれ、ナミブ砂漠では洪水減少が森林枯死をもたらしたり、長期間にわたる洪水が植物種に影響を及ぼすことが判明した。

  4. 「アフリカ狩猟採集民ブッシュマンの昔と今」
    ~半世紀の記録~
    田中 二郎(京都大学名誉教授、AACK)

     1966年以来、カラハリ砂漠で野生の動物を狩り、植物を採集して暮らすブッシュマンの生活と社会を観察、調査してきました。石器時代を彷彿とさせる生活は、ボツワナ政府主導により1979年から定住化、集住化の道を歩むことになりました。1997年にはついに故郷の地を追われて新しい居留地へと移住を強いられ、一千人を超える大集落で生活は激変しました。写真で、昔の狩猟採集生活とその後の大集落での生活へと急速に変容をきたしてきた様子を紹介された。大型の野生動物を倒すくだり、特にキリンを倒し解体するくだりは圧巻でした。しかし、日々の糧は、女性たちが行なう植物の採集に負うているとのことでした。

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