1. アマゾン先住民の文化と暮し
    -シングー国立公園及びその周辺地域の開発について-
    南 研子(NPO法人 熱帯森林保護団体代表)

     アマゾンの熱帯林、及びその地に暮らすインディオと呼ばれる先住民の現状は、開発による熱帯林の破壊に大きく影響され、有史以前より続く独自の文化継承も危ぶまれている。熱帯林減少の原因は、先進国に暮らす人間の消費と深い関係にあり、遠いアマゾンの熱帯林消滅危機は、日本人の生活と密着している。この事実について、今年7月に行なった29回目のアマゾン視察に基づき、その最新の実情を映像を交え報告された。

     兎に角、圧倒的な迫力ある話(報告)だった。26年間に亘り延べ29回、アマゾンを訪問し先住民インディオと生活を共にしてきた人ならではの、慈愛と慟哭、そしてインディオを支援する強靭な意志を感じさせられた。開発行為(熱帯林破壊活動)は多岐に亘っている。地平線の彼方まで広がる牧場(肉牛飼育)、大豆栽培・養鶏、サトウキビ栽培(エタノール原料として)、鉱山開発(特に鉄鉱石)、水資源開発(ダム建設)、金採掘と水銀の使用など等である。

  2. ネパール・ランタンプロジェクト、OCUAC
    -ランタン谷と峰々に魅せられて、夢の途中-
    兵頭 渉(大阪市立大学山岳会、2015年ランタン・リ(7205m)登山隊)


     大阪市立大はランタン谷とは縁が深く、日本隊最初のヒマラヤ遭難は当山岳会の[ランタン・リルン]に始っている。2010年春、50回忌墓参団を編成し、リルンBCとランタン村の「墓碑」の前で法要を営んだ。この時、ランタン谷の山々への登山が話題に上がり、以来、『市大ランタンProject』としてランタン谷へ登山隊を派遣してきた。

     2015年は、最奥の「ランタン・リ」登山中に今回の地震に遭遇した。 プロジェクトの立ち上げ、5年間の活動、2015年ランタン・リ登山隊の活動、そして2015年4月25日に発生したネパール大地震の惨状(ランタン村に僅かに残った「墓碑」)等を紹介された。

     ネパール、ランタン谷の再生と復興を祈って! 再びネパール、ランタン谷へ!として、話を結んだ。

  3. ブラジルの茶園・茶産業
    -日系移民の開拓の歴史-
    上原 美奈子(ティ‐・リテラシ‐、お茶で南の国々とつながる会 代表)


     現在、約160万人の日系人が住むといわれているブラジルには、Japones Garantidoという言葉がある。「日本人であれば信頼できる、信用するに値する」という意味だそうだ。日系移民が築いたこの言葉の重みを、珈琲の国ブラジルに一大紅茶産業を打ち立てた岡本寅蔵氏の歴史とともに考えてみたい。」として、たった一人の移民の「拓魂」による茶業の発展の歴史を、紹介された。

     岡本寅蔵氏は1893年、奈良県に生まれる。1919年、夫婦で渡伯。この時、青桐の苗木を持参したものの、上陸時に海に落としてしまったそうで、止むなくサンパウロ植物園の茶の種25粒を蒔いた。このことが全ての出発点だったとのこと。「おばあ茶ん」と「天谷茶」で検索してみてほしいとのことでした。

  4. アンデス山脈の家畜と祖先種、そしてジャガイモ
    大山 修一(京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)


     アンデス山脈には有名なラクダ科の家畜、アルパカがいる。この祖先野生種と考えられているのがビクーニャである。ビクーニャにはおもしろい習性があり、そのひとつが、ため糞をすることである。そして、この糞場に生育するのがジャガイモの祖先野生種のひとつ、アカウレである。

     ジャガイモの起源地はアンデス山脈のチチカカ湖畔とされてきたが、これまで具体的な場所の報告はなかった。どうも、ラクダ科動物の糞場がジャガイモの起源地だったのではないか、と紹介された。(「講演要旨」より)

     ビクーニャの糞場に生育する野生種のイモの地下茎は、糞や糞に由来する土壌層の厚さ以上に伸長することは無かったと言い、野生種のイモが肥大する条件、イモを掘ることの重要性に言及された。

     「ナスカの地上絵」を目的とした日本人観光客と近ずくタクシー運転手、ユーモアを交えた日常生活風景の紹介もありました。

  5. 南米・パタゴニア氷原—30余年の調査の軌跡 
    安仁屋 政武(筑波大学 名誉教授)

     パタゴニアは、南米の南端に位置する広大な地域(日本の2倍強)で、チリとアルゼンチンにまたがっている。ここ(チリの太平洋岸)に、日本はもとより世界でもほとんど知られていない、世界でも有数の規模を持つパタゴニア氷原がある。講演者はこの地域の氷河について1983年からいろいろな調査を行ってきた。今回は、調査地への旅の珍しい写真とエピソード・苦労話などを交えながら、これらの調査について紹介された。(「講演要旨」より)

     氷の浮く湖面にこぎ出すゴムボート。ライフジャケットは着用せず。水中に落ちたら、着けていてもいなくても同じ…ということらしい。足下にクレバスを覗きながら歩く光景、氷河から流れ下る激流を飛び越す光景、何れも怖い画像である。しかし調査・研究に携わる人々の表情は明るく柔和である。「羊の丸焼」の様子が、羨ましい。

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