次に、西田 文信(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 准教授(言語学))から、『ブータン王国の諸言語について 〜言語多様性の現状と課題〜』と題した発表をいただきました。

 世界には約7000の言語があり、その内、文字をもつ言語は約350。その言語を話す人口が5000万人以上の言語は23ある(ちなみに、話す人口が多い順位でいうと、日本語は第9位とのこと)。言語学では、生物学のように言語を分類し、系統を調べる研究方法が発達しているが、実は言語学の方が歴史が古く、生物学の分類は言語学に倣ったそうである。このような前置きの後、ブータン王国諸言語の現状が語られた。 

 講演者が研究対象とするシナ-チベット語族の内、チベット=ビルマ語系の言語は約400あり、その内の20以上が九州ほどの広さのブータン王国で話されている。英語と並び公用語となっているのはゾンカ語であるが、ツァンラ語、ネパール語も同等に広く話されており、いずれも10数万人の話者人口をもつ。一方、それ以外の諸言語を話す人口は数百人から数万人に留まり、その実態は殆ど未解明である。

 言語の多様性は人類が共有する文化的財産であるが、これらの言語の多くは今、急速に消滅に向かう「危機言語」となっている。生きた言語を有効に研究できる期間はごく限られている。講演者は遅きに失することが無いよう、できるだけ多くの言語を対象に、言語学の手法を駆使したフィールドワークにより、これらの言語の記述(音韻・形態・統語)と歴史研究(主に音韻変化)を行っている。

 ブータンでは狭い地域に多数の言語が存在するというが、これは方言とどう違うのか?という質問があった。2つの言語の間に、対応関係がある言葉がどのくらいの割合で見つかるか、などの分析により独立した言語か、方言か、区別されるという。一方、独立言語として扱われるには、政治的な理由もあるらしい。方言に近い言語が、互いに独立した国家で話されているため、別な言語とされる場合もあるそうだ。

 

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