第20回雲南懇話会は、師走の気忙しい時期、いろいろに催しの重なる時期にも拘わらず、延べ107名の参加をいただき、終了致しました。ご支援ご協力に感謝致します。講師の皆様、ありがとうございました。

  1. 前田から、2011年に行った「タイ文化圏Study Tour」の様子、特に北タイに残る「ビルマ戦線で敗れ、タイまで敗走した日本軍将兵の慰霊碑」を中心に紹介しました。
  2. 平出和也さんのナムナニ峰(7,694m)南峰初登頂そして主峰への縦走、いつもながらの小気味よい語り・臨場感一杯の画像と映像、堪能しました。
  3. 総合研究大学院大学博士課程の宮脇千絵さんには、雲南省文山県のモン(ミャオ族)を中心に、伝統的素材が麻(大麻)であることから始めて、その服飾文化とその変化について、詳述していただきました。
  4. 信州大学大学院農学研究科の松島憲一准教授から、ブータン王国の山菜の利用と伝統的知識について、フィールド調査を踏まえた話、山菜利用とGNHの密接な関わり、GNH政策との一致している様子を概説されました。
  5. 名古屋大学名誉教授の上田豊さんは、「ヒマラヤと世界の氷河縮小」「分断された氷河(1974年と2007年の比較)」「アンナプルナ内院の変容「ブータンの氷河湖」など等、雪氷圏の将来まで概説していただきました。氷河の消耗(減り方)に関して、日射の energy の寄与が80%、藻類・バクテリアの影響が増加、長江・黄河の水量減少に対する氷河の寄与率1%、という諸点が印象的でした。何よりも、最後にスクリーン一杯に映写された「残照のヤルン・カン」! 圧巻でした。同名の文庫本は、AMAZONで購入可能です。

(撮影:長岡正利)

概要

第20回 (2011年12月10日(土)、東京市ヶ谷・JICA研究所-国際会議場)
  演題
発表者
所属
1 「タイ王国・北タイの旅」-タイ文化圏Study Tour の記録、2011年2月&7月- 前田 栄三 AACK
2 「中国チベット自治区・納木那尼(ナムナニ)峰(7694m) 南東壁登攀」―2011年秋の記録- 平出 和也 アルパインクライマー
3 「中国雲南省におけるモン(ミャオ族)の服飾文化とその変化」-文山壮族苗族自治州文山県を中心に- 宮脇 千絵 総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程
4 「ブータン王国の山菜」-野生植物の食用利用とその伝統的知識について- 松島 憲一 信州大学大学院農学研究科
5 「地上と上空から見たヒマラヤの変貌」 上田 豊 名古屋大学名誉教授(氷河学)、 AACK

20111210_20_00_maedaまず、『タイ王国・北タイの旅 -タイ文化圏Study Tour の記録、2011年2月&7月-』 と題して、前田 栄三(京都大学学士山岳会)のご発表をいただきました。

≪以下、講演要旨より≫

北タイではアカ・ラフ・リス・カレン族など20以上の少数民族が暮しており、総数は大よそ100万人と見られている。国境の無い時代に山の民・森の民として自由に暮して来た彼らにも、近現代の時代の荒波は容赦なく降り注いできた。一方、この北タイの地域は、ビルマ戦線なかんずくインパ-ルに敗れた日本兵が命からがら辿りつき、遂に力尽きていった地でもある。各地に残る慰霊碑を紹介し、哀悼の意を表したい。

第1回タイ文化圏スタディーツアーのご報告にも報告がありますので、合わせてご覧ください。

20111210_20_02_hiraide次に、『中国チベット自治区・納木那尼(ナムナニ)峰(7694m) 南東壁登攀 ―2011年秋の記録-』と題して、平出 和也氏(アルパインクライマー)のご発表をいただきました。

席上配布資料と動画は、下記で公開されています。頂上からの眺望、秀麗なカイラスの山容をお楽しみください。

http://yukiyama.co.jp/mountain/2011/11/post-107.php

また、登頂の様子が「岳人」2012年1月号の【第3特集】現代アルピニズムのプロファイル(48)として掲載されています。文;谷口けい、写真;平出和也とあります。書店でご覧ください。

http://www.tokyo-np.co.jp/gakujin/gak2011120902.html

20111210_20_03_miyawaki3番目には、宮脇 千絵氏(総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程)にご発表いただきました。演題は『中国雲南省におけるモン(ミャオ族)の服飾文化とその変化 -文山壮族苗族自治州文山県を中心に-』でした。

≪以下、講演要旨よ り≫

雲南省文山壮族苗族自治州のモン(ミャオ族の下位集団)の服飾は、細かいプリーツのついたスカート、藍によるロウケツ染め、カラフルなクロス・ステッチ(刺繍)が特徴的です。しかしこの10数年で、染織をおこなう機会が減少したり、工業生産された化繊布が市場で入手できるようになったりと、服飾をとりまく状況は大きく変化しています。今回の発表では、モンの服飾のなにがどのように変化しているのかを紹介します。

20111210_20_04_matsushima4番目には、松島 憲一氏(信州大学大学院農学研究科)から『ブータン王国の山菜 -野生植物の食用利用とその伝統的知識について-、』と題した発表をいただきました。

≪以下、講演要旨よ り≫

演者ら信州大学とブータン農業省の共同研究チームは、2005年より6年間にわたりブータン王国で食用利用されている山菜などの野生植物についての現地調査を行ってきた。この調査は同王国全20県の農村、市場等において行われた。この結果、6科18種のシダ植物の若い葉が、60科172種の種子植物の葉、花、果実、根などが食用利用されていることが明らかになった。現地では苦味のある植物が好まれる他、日本の山菜と共通する植物種もみられた。

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最後に、上田 豊氏(名古屋大学名誉教授(氷河学)、 AACK)から、『地上と上空から見たヒマラヤの変貌』と題した発表をいただきました。

≪以下、講演要旨より≫

ヒマラヤで氷河観測を始めた1970年代には、地球の気温はやや下降気味で氷河の拡大が予測されたが、1980年代から温暖化が始まった。氷河の縮小は、ローカルにはその融け水を利用する周辺地域の水資源にかかわり、また氷河末端の湖が拡大し決壊災害を起こすおそれもある。他方グローバルには、地球の海面上昇につながる。ヒマラヤで起きている氷河・氷河湖の変動、また雪の山々の変貌を、1960年代からの地上写真と2007年の空撮写真等から見てみましょう。

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