第28回雲南懇話会は、2014年4月19日(土)、東京市ヶ谷のJICA研究所国際会議場で開催され、102名の参加をいただき終了いたしました。遠方の名張市(三重県)、中津川市(岐阜県)、名古屋市、都留市(山梨県)、福島市などからも参加をいただきました。皆様のご支援、ご協力に感謝します。ご講演いただいた講師の皆様、誠にありがとうございました。

今回も又、スキー山岳部の学生・中国新疆の伊犁から来日した留学生を始め、80歳に近い岳人・企業人・独法&NPO関係者・学識経験者、各界の自由人(OB)まで、5~60年の時空を共有したひと時となりました。

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(撮影: 土生 昶毅)

第28回

日時;2014年4月19日(土)13時00分~17時30分。その後茶話会
場所;JICA研究所国際会議場(東京市ヶ谷)

  演題
発表者
所属
1

6~70歳代で登ったチベット、ネパールの山々
  -シシャパンマ中央峰(8008m)、メラ・ピーク(6654m)-

南井 英弘 JAC評議員・図書委員、関西学院大学山岳会
2 内モンゴル大草原の自然と伝統文化
  -生態移民の事例研究-
ナムラ(那木拉) 千葉大学文学部外国人研究者、同大大学院博士課程修了
3 大地に根差すチベット医学
  -ヒマラヤの薬草をめぐって-
小川 康 薬剤師、チベット医、森のくすり塾主宰
4 チベット仏教の世界
  -仏教伝来からダライ・ラマへ-
吉水 千鶴子 日本学術会議連携会員、筑波大学人文社会系教授(哲学・思想専攻)
5 南極氷床を探る
  -氷床雪氷層が語る地球の気候史-
渡辺 興亜  国立極地研究所(元)所長、名誉教授 

まず、『6~70歳代で登ったチベット、ネパールの山々 -シシャパンマ中央峰(8008m)、メラ・ピーク(6654m)-』 と題して、南井 英弘様(JAC評議員・図書委員、関西学院大学山岳会)のご発表をいただきました。

2002年に新疆の秀峰ムスターグ・アタ(7546m)を無酸素で登り、8千m峰も夢ではないと意欲が湧いた。2003年のバルトロ氷河からゴンドコロ峠越えの厳しい経験から、2004年に初めて公募登山隊に参加し巨峰に登頂し得た。

この頃から注目していたネパールのメラ・ピーク。2013年10月に単独登頂を果たしたものの入山以来12日間連続して雨or雪という悪天候。アタック開始から帰着まで、連続22時間の行動を余儀なくされた。この間の反省・教訓・所感の一端を披露された。

次に、『内モンゴル大草原の自然と伝統文化 -生態移民の事例研究-』と題して、ナムラ(那木拉)氏(千葉大学文学部外国人研究者、同大大学院博士課程修了)のご発表をいただきました。

内モンゴル大草原は遊牧地域である。遊牧民たちは遊牧文化を作り、草原で生活してきた。しかし、2000年頃に北京で砂嵐の被害が起きてから、放牧が砂嵐の原因と中国政府に指摘され、牧畜を草原から排除する「生態移民」政策が実施された。牧畜民たちは草原と伝統的家畜から離され、生態移民となって移住させられた。結果、「生態移民」政策は生態環境を回復できなかったし、逆に移住した牧畜民たちを経済的困窮に落とし、伝統的文化を喪失しつつある。その間の内モンゴルの様子を事例に基づき紹介された。

乳牛を生業として飼育する牧畜民、彼らの街に隣接して立地する石炭火力発電所の景観は、余りに痛々しい。

3番目には、『大地に根差すチベット医学 -ヒマラヤの薬草をめぐって-』と題して、小川 康氏(薬剤師、チベット医、森のくすり塾主宰)の発表をいただきました。

チベット民族の健康を担う医師としての役割は勿論のこと、険しいヒマラヤ山中から薬草を採取して製薬する薬剤師の役割、祈りを捧げて御加持を込める僧侶の役割、歴史や文学、歌などに精通した学者としての役割、これら全てを担う存在がチベット医。

ヒマラヤの薬草を中心に、多様なチベット文化の世界を紹介された。採取した約40kg もの荷(薬草)を背負い、飛び石伝いに川(急流)を渡る光景は、「チベット医は命がけ」との講師の言葉を如実に物語っている。

4番目には、吉水 千鶴子氏(筑波大学人文社会系教授 哲学・思想専攻)から『チベット仏教の世界 ―仏教伝来からダライ・ラマへ―』と題した発表をいただきました。

チベット民族には政治から人々の日常生活に至るまで、隅々まで仏教が浸透しています。現在でも人口の90%は仏教徒であると言われています。今回、チベットへの仏教伝来から17世紀のダライ・ラマ政権の誕生に至るまでのチベットの歴史をお話ししながら、チベット仏教の世界を紹介したいと思います。現在のチベット仏教の骨格である宗派とその教義は大よそこの時代までにでき上がりました。そして、転生活仏を民族のリーダーと考える仕組みも作られたのです。チベット仏教とは、政治体制を支える理念であり、他国との外交手段であり、人心掌握の手段であり、哲学であり、信仰の対象であり、人々の心の支えです。この豊かな世界を、端緒に遡ってお話しします。

最後に、渡辺 興亜氏(国立極地研究所(元)所長、名誉教授)から、『南極氷床を探る -氷床内陸探査史と氷床深層コア研究の成果-』と題した発表をいただきました。

南極大陸上には面積約1200万平方km、平均の厚さ1856mの雪氷層が分布し、巨大な氷床を形成している。南極大陸内陸部は国際地球観測年(1957-58)以前には地図の空白部であった。我国の南極観測は第1次隊から果敢に内陸探査を行い、昭和基地南方「みずほ高原」の自然を明らかにしていった。講演者らの構想に基づく研究計画は1970年代の「エンダ-ピーランド雪氷総合計画」を嚆矢とし、1980年代、1990年代と二つの計画に引き継がれ、現在では「みずほ高原」の地理、気候、雪氷学的状態等を明らかにし、みずほ高原最源流の「ドームふじ」での深層表層掘削(3000m深)に成功し、過去70万年の地球気候・環境変動の再現に成功している。この研究の道筋を紹介する。

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