1. 中国雲南省、梅里雪山
    〜人々の祈り、山麓の暮し〜
    斯那 扎史(スナチャシ)

     中国雲南省のカワカブ(6740m)はチベット仏教徒及びボン教徒の大聖山である。カワカブの外周を一周する外巡礼は600年以上の歴史があるとされる。カワカブの生年は未年であるとされ、 2015年は12年に一度のカワカブ大巡礼の年であった。2015年に実施した外巡礼で明らかとなった変化の凄まじい巡礼路の現状、最近のチベット人の生活や信仰の変化について、その最新の情報を報告した。

  2. 中国チベット自治区・未踏の霊山 カイラース
    〜四宗教の複合的聖地〜
    宮本 久義(東洋大学大学院客員教授(インド哲学・ヒンドゥー教思想))

     中国チベット自治区西部に位置するカイラース山(海抜6656メートル。別名カンリンポチェ、マパムユムツォ)は、ヒンドゥー教、ジャイナ教、チベット仏教、ポン教の信徒たちが等しく霊山と崇める聖域である。1992年に歴史学者の色川大吉氏を隊長とする日本西蔵聖山踏査隊に参加し、収集した巡礼者への聞き取り調査やその後の研究を基に、チベット人、インド人の精神世界の相違をお話しされた。

  3. ネパール、聖地 カトマンドゥ
    〜ヒンドゥー教・仏教・民俗信仰の複合〜
    石井 溥(東京外国語大学名誉教授(文化人類学))


     ネパールのカトマンドゥ盆地は、インド直伝の仏教、ヒンドゥー教と民俗信仰が複合し、人の数よりも神仏の数の方が多いとも言われ、寺院・聖所や祭礼は大変に多く、盆地や集落などを聖なる空間とする観念も様々に発達してきた。カトマンドゥ盆地の文化・宗教を歴史的観点を交えて概観し、この盆地がどのような形で「聖地」であるのか「聖地」とされてきたのかを検討し、併せて近現代の宗教状況の変化についても考えるとして、歴史的変化を概観された。講演で使用された写真は、写真家 大村次郷氏の作品という。

  4. インド、ブータン国境の聖地巡礼
    〜アルナーチャル・プラデーシュとメラの事例から〜
    脇田 道子(日本ブータン研究所 研究員、博士(社会学:慶應義塾大学))


     インドのアルナーチャル・プラデーシュ州西端とブータン東部の山岳地帯には大小の聖地が数多く残されている。この地域はかつてはモン、あるいはモンユルと呼ばれ、チベットの中心部からは周縁とみなされ、ほとんど注目されることはなかった。しかし、実際にはこれらの聖地はヒマラヤ南麓への仏教伝来の黎明期を偲ばせる貴重な文化遺産として誇れるものである。聖地をとりまく歴史的背景、その現状と保存のための課題について報告された。折々、タワン、メラ等、地図で位置を示していただいたので良かった。水力発電所は多くあるが、稼働している施設は少ないという。

  5. 南インドの山と森の信仰
    〜カルナータカ州のブータの場合〜
    鈴木 正崇(日本山岳修験学会会長、慶應義塾大学名誉教授)

     南インドのカルナータカ州の南部ではブータと総称される神霊の祭りが乾期(11月〜4月)に盛んに行われている。担い手の主体は、アウトカーストで、社会的地位は低いが、祭りでは神霊が降りてくる器となり、身体にメイクを施し、巨大な飾り物を背負い、神霊の起源を語り神がかり託宣を行う。時には故地から辿ってきた神話の再現も演じる。山や森に祀られていたブータが、ジャイナ教やヒンドゥー教と混淆し変容してきた過程をお話しされた。

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