1. ネパール、ムスタンの旅
    〜雲南懇話会第11回フィールドワークの記録、2016年4月〜
    遠藤 州(桐陰会山岳部OB会、AACK)

     ネパール中部、チベットとの国境に位置するムスタンは、1991年まで外国人の入域が禁止されていた。近年、入域者数は増加しているものの、日本人に限れば年間入域者数は最近でも100人に満たず、あまり知られていない地域である。

     演者らは本年4月にムスタンを訪問した。ポカラ(ジョムソン)発着で15日間の旅である。その旅の概要と共に、特に(アッパ−)ムスタンの地形、地質、気象、植生、及びカリガンダギ川両岸の景観(段丘崖、侵食崖、川床)、ジョムソンからローマンタンに至る道路事情など、ムスタンの今を紹介された。雲南懇話会で南井英弘さんから紹介された河口慧海記念館は、ジョムソンの南5kmほどのマルファ村にあります。ローマンタンの北西に位置するマンセイル峰(6235m)は、2014年にJAC女子隊が初登頂しました。アッパー・ムスタンは、この折アドバイザーとして参加した谷口けいさんも歩いた地域ですね。

  2. インド・シッキム州、カンチェンジュンガ東面の山旅、2016年4月
    〜困難な入域、ゼム氷河、シニオルチューの麗姿のことなど〜
    頭師 正子(雲南懇話会幹事、薔薇愛好家)

     ネパールとインド・シッキム州との国境にある世界第3位の高峰カンチェンジュンガ(標高8586m)東面、ゼム氷河のレストキャンプ(4500m)に滞在した。ここは世界最美の山と言われたシニオルチューのベースキャンプ地で1970年代までは容易に入山出来たが、最近は環境保護と聖山という理由で入山が困難になった地域である。

     演者たちは今年最初の入山者だそうで、リーダー以下高齢者11人の山旅の様子を紹介した。朝日に輝くカンチェンジュンガ、そしてヤルンカン!何度も拝見することができた。シニオルチューの麗姿も見事だった。シニオルチュー一語で検索してみてください。北大山の会の該当するページに直行します。パウル・バウアーの著書が簡潔に紹介され、1936年にシニオルチューを初登頂したことを含め、翌年のナンガ・パルバット遠征に照準を当てたドイツ隊の様子が要約されています。

  3. トピック「転換期にあるミャンマーの今、その素顔」
    〜アウンサンスーチー女史への期待〜
    大津 定美(NPO法人“小水力発電をミャンマーの農村へ”代表理事、神戸大学名誉教授)


     「NLD圧勝」、選挙結果の受け止め、「あまりにもスムース?」、その後の政権移行のプロセスも極めて民主主義的に、それが可能となった背後に何があったのか?
    ・新政権の経済政策は? 経済開放と産業開発、豊富な資源と低開発、旧政権関係者
    の経済実態支配、外資の進出とそのコントロール、日本の役割は?
    ・「国家顧問」たるスーチー女史への過大な期待? 短期の経済改善困難と国民大衆の「裏切られ感」の危険性、さらに「少数民族との和平(第2パンロン会議)」という「世紀の課題」は?以上のような視点、論点で、「ミャンマーの今」を概観された。

     大津先生ご夫妻は、アウンサン・スーチーさんとは40年来の友人といい、若い頃の写真の数々を披露された。ミャンマーの主産業は農業で、国民の60%以上が農民という。その農村の80%以上の世帯が、夜の明かりがローソクだそうだ。スーチ−女史は小水力発電にとても興味関心を示していて、京都嵐山の発電施設を視察された(2013年4月)という。その一方、2015年6月、ミャンマー政府とロシア国営企業は、「核エネルギーの平和利用協力」について、覚書にサインしたという。 ただただ政治の安定を、まずは望みたい。

  4. ヒマラヤ地震博物館
    〜ネパール・ヒマラヤの環境変動研究から考える〜
    伏見 碩二(カトマンドウ大学客員教授、滋賀県立大学名誉教授、北海道大学山の会(AACH))


     演者は、1965年からのネパール・ヒマラヤ調査で、3つの自然災害を体験した。
    1)1977年9月3日のクンブのミンボー氷河湖の決壊洪水と2)2012年5月5日のポカラのセティ川洪水、そして3)2015年4月25日のカトマンズ周辺のゴルカ地震である。いずれの自然災害も、発生直後に現地調査を行った。長年のヒマラヤの環境変動研究から考えたそれらの自然災害の特徴と、過去(1934年と1833年)の地震災害の教訓が生かされていない現状から、住民の災害意識の向上のため住民と研究者が協力してともに学べるよう、カトマンドウに地震博物館を設立することを、構想した。液状化現象の実験に見入る子供の瞳の輝きが印象的だった。

     カトマンドウ盆地は、既に脆弱な地下地質構造が指摘されている。国民に注意喚起を促し、建築基準を見直す必要性も指摘されている。 (「2015年ネパール地震のテクトニクスとカトマンズの極軟弱地盤」京大大学院理学研究科、酒井治孝、日本地質学会)

  5. 中国の水資源・水環境をめぐって
    〜沿岸部と内陸部の対比から〜
    窪田 順平(総合地球環境学研究所 研究基盤国際センター副所長・教授、AACK)

     改革開放政策以降、近年の中国の経済成長はめざましいが、その代償として多くの環境問題に直面してきた。水に関しても、1990年代の黄河断流、長江大洪水をはじめ、2007年におきた太湖のアオコ大発生による長期の取水制限など、量と質の両面で問題が顕在化した。三峡ダムや南水北調や太湖で行われた水汚染対策など、国家的な取組が行われた中国の水の量と質に関して、西北部乾燥地域や太湖等具体的な事例から、現状を概観された。
    以下の3点が、特に印象深かった。
    1. 国全体では、中国に水の危機は無い、量はコントロールされている。
    2. しかし、質が問題。
    3. 北京、天津、河北省、河南省では、物理的に水が不足している。

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